今回は、4大コンサルティングファームデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、デロイト)の中でも上位1%の人材しか到達できないS評価人材になった経歴を持つ、株式会社キーメッセージ代表取締役権藤 悠さんにお話を伺いました。
これまでの経歴や独立背景はもちろん、幼少期や学生時代のエピソードなどプライベートな質問にもお答えいただきました。
コンサルタントとして独立するための準備や方法、動き方までアドバイスをいただきましたので、独立希望者はぜひ、参考にしてください。
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株式会社キーメッセージ代表取締役「権藤 悠」さんの経歴
スキルバ:まずは権藤さんのこれまでの経歴を教えてください。
権藤氏:株式会社キーメッセージの代表取締役の「権藤 悠(ごんどうゆたか)」と申します。主な経験・経歴としては、中小企業、ベンチャー企業でIPO上場前の組織づくりや人事企画・経営企画・新規事業立ち上げなどに携わっておりました。
その後、3社目で大手経営コンサルティングファーム「デロイト トーマツ コンサルティング合同会社」に移籍し、最大20万人の社員を抱える業界トップクラスの大手企業様をはじめとしたクライアントに対し、評価や採用、グループ内の人材流動性を実現するための戦略構想からシステム基盤づくり・運用まで一気通貫で支援していました。
これからの日本企業の成長をサポートするために独立を決意
スキルバ:3社目の大手コンサルティングファームに在籍していらっしゃったのは、今から何年くらい前になるのでしょうか?
権藤氏:今から2年前になります。
スキルバ:独立するまでの背景やきっかけとなるエピソードについてお伺いしてもよろしいでしょうか?
権藤氏:新卒で入社したのは小さなソフトウエア開発会社で、エンジニアや理数系のエキスパートやテクノロジストが社員の9割を占めている専門性の強い企業でした。その中で、PRや採用、事業企画などに携わっていました。
2社目では、大学時代のサークルOBが代表を務めるスタートアップ企業、株式会社ZUUで業務に携わっていたのですが、自分の力不足を実感する部分が大きかったです。
人事をやりながら経営陣とも伴走できるような実力をつけるのが私の理想でしたので、これまで携わってきたオペレーショナルな部分に加えて、戦略構築や企画推進の経験を積むために、3社目の「デロイト トーマツ コンサルティング合同会社」へ入社しました。
そこで3〜4年ほど各業界の大手企業様を支援し、その中で様々な方法論を勉強させていただき、これからの世界で戦う日本企業の成長をスタートアップから支援したいという想いのもと独立を決めました。
みんながやりたがらない重要なポジションを担当
スキルバ:ご自身の理念を追求するために行動し続けてきた結果、独立に至った権藤さんですが、学生の頃から人材育成や組織作りといったフィールドで活躍したいという想いがあったのでしょうか?
権藤氏:いえ、結果的に現在の形になりましたね。学生時代を思い返してみても、私はみんながやりたがらない重要なポジションに就くことが多かったです。
たとえば、小・中・高と野球をやってたのですが、みんながキャッチャーをやりたがらないからやってみたりだとか、誰も手を挙げないから生徒会長に立候補してみたりだとか知らず知らずチームをまとめる係を担当することになっていました。
スキルバ:自然と組織作りに関連するポジションに就いていたのは、現在のご活躍につながるポイントかもしれませんね。
権藤氏:たしかに学生時代の経験から学ばせてもらった部分も多いですね。
とくに野球部の活動の中で、小学校の頃は甲子園出身の監督の下、勝利第一主義の体育会系の雰囲気の中で取り組んでいたのですが、中高は進学校だったため「野球観戦が好きで入部した」といったモチベーションの人も多かったです。
それまで自分は、勝利第一主義で野球に取り組んできたので、大きなカルチャーショックを受けて、その経験から人と組織がテーマになっていった部分はありますね。
チームとしての「試合に勝つ」という目標・ビジョン以外にも、1人ひとりに損得勘定があるということを知り、どうすればその2点を繋げられるのかといった部分に意識が向くようになっていきました。
『世のため人のために助けになること』が活動の軸
スキルバ:人がやりたくないポジションに自分から飛び込んでいく権藤さんですが、そのモチベーションはどこから生まれてくるのでしょうか?
権藤氏:根本的には幼少期、母方の親戚に自己肯定感を育んでもらった体験が大きいと思います。
とくに祖母は「悠くんならなんでもできるよ」とすべてを受け入れてくれるおおらかな人でした。そんな祖母に優しく肯定してもらった経験は、今の自分を形成する大きな要素の1つです。
スキルバ:素敵な考え方のお祖母様ですね。
権藤氏:本当にそう思います。祖母には多くのことを学ばせてもらいました。実はうちの社名「株式会社キーメッセージ」も祖母からもらった言葉から付けています。
祖母は亡くなる直前、私に「悠くん、あなたは世のため人のためになることをやってますか?」と問うて息を引き取りました。その問いの「キーメッセージ」が自分の中で強く残っていたこと、信念になったことから現在の会社名になりました。
祖父母や両親は、「世の中のために行動する」考え方で行動する人たちでした。
祖父は戦後の産業発展の肝となる日本の電力業界に尽力し、トヨタ等と日本代表のプロジェクトメンバーとしてアメリカに渡り研究していました。また方法論を日本に持ち帰り、経営工学の研究者として大学で教鞭をとりながら人材育成にも尽力しました。
父も技術者として、日本の高品質の電力発電技術を世界中に提供して回っていました。小学生時代、父に「なぜその業界を選んだのか?」と問うたところ「日本は資源が無い国だからこの業界を選んだ」と言われたのを今でも覚えています。
そのような社会全体の課題や身近で困っている人に応える姿をみて育ってきたため、知らず知らず自分の中でも、重要な価値観として利他的な考え方が根付いたように感じます。
もちろん、自分の欲求もありますし「すべて人のために」とはいかないので、葛藤した時期もありましたが、そのような考え方が自分の根本の軸になっているのは間違いありません。
周りのために生きていく中で抱えたジレンマ
スキルバ:人のために生きていく中で葛藤した時期もあるとおっしゃいましたが、その内容について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
権藤氏:自分の素直な欲求から中高時代、半グレみたいな状態になったことはありましたね(笑)自分を脱皮できない自分みたいな。
とくに大学時代は、周りの人たちが学生時代から起業したりだとか、自身の欲求に素直に生きている中、自分はどうしてもいい子でまとまってしまう部分があって。今ではそういう自分なんだと受け入れていますが、もやもやしていた時期も多々ありましたね。
スキルバ:なるほど。そういった経験やジレンマも含めて、今のキャリアの糧になっている部分はあるのでしょうね。
権藤氏:そうかもしれませんね。現在の中心的なドメインである組織人事、バックオフィスに関しては、めぐりにめぐってたどり着いたので、裏を返すと強いこだわりはないですね。
自分の人生の中で現状、与えられている役割が組織人事、バックオフィスだったという認識です。別のことにもチャレンジしたいと考えています。
スキルバ:あくまで周りのため、社会のために必要だからやるといったスタンスなのですね。たとえばどのようなことにチャレンジしていきたいと考えていますか?
権藤氏:地元が広島、お好み焼きを毎週のように食べて育ったこともあり、そのお好み焼き屋のおばちゃんが生んだコミュニティに支えられた経験から、将来的にはお好み焼き屋をやりたいですね。店名は「ごんちゃん」です。(笑)そこからお好み焼きとコミュニティーをかけ合わせたグローバル事業に取り組もうと思っています。
しかし、はじめての起業、自分でビジネスを0から作り切った経験がまだないので、現在は過去の経験資産を活かしてバックオフィスとテクノロジーの分野に取り組んでいます。
たとえば、人的資本経営の観点から、欧米と日本の同じ「モノ・カネ(有形資産)」を持っている企業間を比較しても生産性・時価総額は7〜8倍違うケースがあるといわれています。
その辺りは企業全体の課題として、無駄な会議や業務、稟議の効率化などの様々な改善点と向き合い、変革していくべきだと考えていますし、私も貢献したいと思っています。
また、得意な人が得意なことに特化して行う。それによる生産性向上や、型化できることはテクノロジーに置き換えることをもっとしていく必要があり、そういった支援を行っています。
利己的な欲求として『世界を知りたい』
スキルバ:人のため、社会のために自身に任せられた使命をまっとうされようとしている権藤さんですが、自身の欲求を満たす利己的な活動としては、どのようなことをやられてきたのでしょうか?
権藤氏:昔の話ですが中学時代、父親の影響でプログラミングと出会って、広島カープのファンサイトを作ったことがありました。広島市民球場でオフ会をする目的で作ったのですが、とある選手の名前でGoogle検索1位を取ったり、選手の家族も訪問してくれたり。
そんな原体験から好奇心のあるテーマのコミュニティ作りが好きなんです。ChatGPTの勉強会、美味しいモーニングを食べながら語る会、ゴルフの会。誰かと約束すると達成できることってありますよね。
現在は「利他の自分」と「利己の自分」がモードで分かれていると感じます。それぞれ相関性もありますし、独立するときもありますが、互いにエンジンになっている感覚があります。
スキルバ:その辺りは上手に切り替えているわけですね。思いっきり利己を追求するモードの時に、やりたいこととして何かありますか?
権藤氏:世界をもっと知りたいという好奇心はあります。組織人事の観点からも世界をもっと知らなければと考えていますが、これは義務感ではなくあくまでも好奇心で知りたいといった感じです。
自分の意義や価値を見いだすために『ゼロイチ』を作りたい
スキルバ:好奇心から世界を知りたいという欲求があるとお話しいただきましたが、それでいうと「デロイト トーマツ コンサルティング合同会社」で働きながら経験できることも多かったのではと思います。
社内での評価も非常に高かったと伺っていますが、どういった心境から独立を決意されたのでしょうか?
権藤氏:代わりが効く仕事だと実感したからです。
たしかにデロイトでは、20万人規模の世界大企業の人事刷新プロジェクトを推進した功績が認められ、社内人材の上位1%といわれている「S評価」をいただいていましたが、それでも在籍し続ける理由にはならなかったですね。
スキルバ:デロイトのS評価は、そう簡単には取れないとお聞きしております。そのような上位1%の人材であっても、代わりは効くものなのでしょうか?
権藤氏:自分じゃなくてもできるよねという感覚はずっとありました。
現在、コンサルティング業界では人材育成が課題だと感じています。コンサルティング人材の採用が非常に難しく、ポテンシャル人材を採用するケースが増えています。
その場合、業務の内容も専門性が高い領域ではなく汎用的な業務しか任せられないケースも多く、高いコンサルティング能力を持つ方に業務が集中する傾向があります。
その結果、半分、力の入らない状態に陥ってしまったんですね。ようは利他がいき過ぎてしまって「自分の価値ってなんなの?」と思い悩んでしまったわけです。
ありがたいことにデロイトからは評価していただいていましたし、期待しているとも言ってもらっていたのですが、より飛躍していくために、視野を広げる必要があるのではないかと感じました。
そこからさまざまな可能性を模索してみたのですが、競合のコンサルファームに移っても状況は大きく変わりませんし、ベンチャーに戻ったとしても1社目、2社目と変化がありません。
やはり、自分自身の価値や意義を実感するためには、これまで培ってきたスキルやノウハウを活かしてゼロイチでサービスや企業を作るべきだと考え、独立に至りました。
【独立希望者必見!】コンサルティングファームから独立する際の2つのパターン
スキルバ:コンサルティングファームから独立する場合、どういった形式を取るケースが多いのでしょうか?
権藤氏:基本的には「フリーランスとして独立する」か「部署やチームごと独立する」の2パターンに分かれます。
自分の事業的に会社の1部署を回している場合、半分、売却するような形で部署ごと移動するといったケースが多いです。
一方、そこまで自分がお客様とやりとりしていなくて自分だけが抜ける場合は、フリーランスとして独立します。人材確保と育成は深刻な課題といえますね。
スキルバ:最近ニュースで見ましたがデロイトは1万人規模の正社員を2030年までに採用するために動いているようですね。
権藤氏:たしかに前職では、正社員での採用を重視する傾向があります。
ただ、そのような大規模の採用活動を行う背景には、以前に比べて独立を視野に入れる人が増えていることが少なからず影響しているのではないでしょうか。
実際、フリーランスや個人事業を支援する紹介会社やサービスも増えているので、より独立後も活躍しやすい時代になったと感じています。
以前は自分でプロジェクトを回せるスキルがあっても、顧客の獲得に壁を感じて独立しない選択を取る人も多かったですが、そういった紹介会社と組めば、営業に関する課題は解決できますからね。
もちろん、大手コンサルファームに勤めることで大規模なプロジェクトに携われたり、安定して収入を得やすいといったメリットもあるため一長一短ではありますが、現実的な選択肢が広がったのは間違いないでしょう。
コンサルタントとして成長し続けるための『キャリアパス』
スキルバ:個人的には、コンサルタントは複数のコンサル会社やファームを回って経験を積むというイメージがあるのですが、現在そのような動き方は主流から外れてきているのでしょうか?
権藤氏:今でも30〜40代のコンサルタントはそういった動き方をする人も多いですが、中長期でみるとスキルが伸びないと気づき始めている人が増えているように感じます。
実際、スキルが足りていないコンサルタントも多く、新たなスキルを身につけないまま滞留してしまっている人も少なくありません。
コンサルタントとして、常に成長し続けるためにはベンチャー企業に身を置いたり、フリーランスとして独立してみたりといった新しい動き方が必要だと考えます。
コンサルタントとして独立するために必要な準備
スキルバ:独立する場合だと、コンサルタントとして企業に勤めながら副業をして、目処がついてきた時に、フリーランスになる人が多いのでしょうか?
権藤氏:週末に営業活動などの独立準備をし、フリーランスになる人もいますね。
他にも、雇われ社長のような形で投資家のオーナーさんと組んで、自社サービスを提供する人もいます。
独立を決めた当初は、何をやるのか具体的な方向性が定まっていなかったので、ひとまず企業で勤めていた年収と同程度の収入を担保できるくらいの案件を確保しました。
ただ独立後、税金関係を自分で全部やらなきゃいけないとなると、会社勤めの2〜3倍くらい売り上げがないと安定しないと聞いていたので、その辺りの収益を目指して営業活動をしていましたね。
スキルバ:独立を視野に入れていないコンサルタントに、案件紹介のプラットホームの利用を意識してもらうには、どのような内容を発信していくべきでしょうか?
権藤氏:サービスを利用するメリット、つまり営業活動を代わりにやってくれるといった内容とあなたのスキルが提供できる旨を明確に伝えることですかね。
今まで持っていた企業のブランドがなくてもやっていけるという自信がつけば、独立も選択肢に入ってくるのではないでしょうか。
ただ、私の場合はベンチャーを2社経験した後、大手コンサルファームに勤めたので、自分のスキルを俯瞰できていますが、新卒でコンサルファームに入社した人は実力を測れていないケースが多いです。
実際、高度なスキルを持っていて独立すれば3,000〜4,000万円稼げるのに、自分のスキルレベルを正しく理解できていないために、躊躇している人も大勢います。
そのような人に、自身のスキルが独立後も通用するものだと理解してもらうためにも、成功事例を発信しているこのメディアは価値のあるものだと思います。
スキルバ:ありがとうございます。まさしく独立したい人のハードルを下げるために、本メディアを発信しているので、そう感じてもらえるのは非常に喜ばしいことです。
営業プロセスは出来るだけ早く経験しておくべき
スキルバ:権藤さんの場合、営業スキルをお持ちだったことが独立につながったひとつの要因だと思いますが、今までのどのキャリアで培われたのでしょうか?
権藤氏:営業スキルは採用業務の中で身についた部分が大きいですね。採用業務は営業と似たようなプロセスをたどるため、その感覚は営業活動の中でも活用できます。
あとは、新卒で入社したソフトウェア開発会社での経験が大きかったですね。
社員の9割がコーディングの専門的なスキルは持っているけど、ビジネス拡大に課題があったため、私も未経験でしたがテレアポチームをインターン生で組んで、顧客リストを取る営業活動をしていました。
他にもミャンマーの位置情報を集めるアプリを活用して、大手総合商社やコンビニなどミャンマーに進出している企業にアプローチをして、商談まで持っていくといった貴重な経験もさせてもらいましたね。
スキルバ:新卒でそのような経験ができたからこそ、現在の営業スキルにつながるわけですね。
権藤氏:それはあると思います。また、私の場合は学生団体の活動の一環として、参加料8〜9万円の合宿イベントの参加者を全国から200名集め、1800万円くらいの売り上げを作るといったマーケティング活動を経験していたので、その点も大きかったと思います。
当時はチームで動いていたので達成できた部分もありますし、自分でゼロから営業する場合はまた勝手が違うので、経験をうまく活かせないこともありますが、若いうちに具体的なプロセスを肌で感じれたのはありがたかったですね。
スキルバ:たしかに30歳を過ぎてから営業を覚えようとしても、プライドが邪魔してしまうケースはありますからね。
権藤氏:本当にそうですね。プライドが邪魔してる人はすごくもったいないと感じます。年齢関係なく、自分自身でアンラーニングしていくことが重要ですね。
組織づくりのプロが直面した自社の課題
スキルバ:営業によって案件を獲得した後、さらに事業を拡大していくためには、自分と同等のパフォーマンスを発揮できる人材を増やしていく必要があると思いますが、その辺りの取り組みについてお聞かせください。
権藤氏:組織づくりはまさしく現在、直面している課題の1つですね。
フリーランスとして独立して半年、法人化して1年経ちましたが、最初の半年から1年くらいは、事業のテーマを模索している期間だったため、人を採用することに積極的ではありませんでした。
そこから、型化できる部分を秘書サービスに依頼したり、副業の人やコンサル未経験の人にプロジェクトに参加してもらったりしたのですが、業務に対して自分の求める基準が高すぎる故に、周りにも同じ完成度を求めてしまうんですね。
FBやレビューの水準が高過ぎて、担当者との価値観が合わないことも多々あったため、1人ひとりのスキルや得意分野をしっかり俯瞰して、定量的に基準を作る必要があるなと改めて実感しました。
スキルバ:実体験を通して、人事制度の策定の重要性を再認識したというわけですね。
権藤氏:まさしくですね。普段クライアントに対して指摘している部分を自分もできていなかったので、そこの仕組みを整え、現在も改善しながら業務を進めています。
コンサル経験者と同じ業務を学生に任せられる世界へ
スキルバ:自社で採用する、または業務を依頼する人材の基準に関しては、どのような考えをお持ちなのでしょうか?
権藤氏:即戦力となるコンサル経験者はもちろん、学生やインターン生も活躍できる流れを作っていきたいです。具体的には、学生やインターン生がコンサル2、3年目くらいの業務をこなせる世界に変えていければと考えています。
私はこれから20〜30年で学歴の価値が変わると予想しているため、在学中にどの程度社会で通用するスキル・ノウハウを蓄積できるかが重要だと考えます。
スキルバ:同意です。現在「Alphakt」で一緒に働いているメンバーの中には、大学4年生で月80万円程度の収入を得ている優秀な人材もいます。今後、そういった学生から起業した成功事例が増えそうですよね。
権藤氏:そうですね。とくに学生で一発当てて起業するのではなく、地に足がついたスキルで月80万円稼げるといったロールモデルがいくつもあれば、学生の意識改革につながるのではと考えています。
ただ実際、そのような意識の高い学生ばかりではないので、二分化が進むのではと予想しています。
中間層がいなくなって、学生時代に社会で通用するスキルを身につけられた層とそれ以外の層が明確に分かれ、将来的な格差も広がっていくのではないでしょうか。
自分自身が感じる経営者としての壁
スキルバ:経営面における自分への課題として、どのような点が挙げられますか?
権藤氏:私には周りを頼らず、問題を抱え込んでしまう部分があるため、そこは経営者として壁になる部分だと感じています。その部分は、私の原体験からなる「優等生じゃなきゃいけない」といった意識にも関係しているように思います。
1年前よりは大分、改善の兆しがみえてきているのですが、それでもどこまで周りを頼るのかといった部分は課題として、しばらくは向き合っていかなくてはいけないポイントになりそうです。
スキルバ:たしかにフリーランスや経営者として活動していく中で、誰を頼ればいいかわからない部分はあります。それこそ案件の取り方だったり、雑務のこなし方だったりさまざまなポイントはあると思いますが、中でもメンタル面はとくに言語化しにくい部分ですよね。
権藤氏:そうなんです。メンタル系の悩みは非言語ですが、非常に重要なポイントだと感じます。
実際、「デロイト トーマツ コンサルティング合同会社」の組織人材系チームの人から相談を受けたりするのですが、そういった悩みを抱える人のフラストレーションを解決して、今後のキャリアを決めるためのサポートもスモールスタートしています。
スキルやノウハウはあるけど、将来は別のことをしたいという願望があり、メンタル的なギャップから前に進めない、具体的にどう進むべきか道筋が分からないといった人が弊社サービスを通じて活躍できれば良いですよね。
そういった人のスキルによって、クライアント企業に価値を提供できて、彼らも新しい挑戦ができる、そんなWin-Winな場所を作れたらと考えています。
スキルバ:素敵なアイデアだと思います。そういったなかなか相談できないメンタル面も、ラフに打ち明けられるコミュニティを目指していきたいですね。
人的資本経営に沿った業務改善が現在の課題
スキルバ:どういった課題を持っているクライアントに寄り添っていきたいと考えているのでしょうか?
権藤氏:現在、うちの会社では大手・中小・スタートアップの3方向でサービスを提供しています。大手企業の場合だと「人的資本経営」が1つのテーマになっていて、情報を開示する動きが求められています。
ただ、現在では単純に情報開示するだけでなく、1人ひとりのタレントが活きるために人事業務をどう改善するか一歩踏み込んだ対応が必要になってきています。
その中で、育成や評価の繋がりがばらばらだったり、オーガナイズされていなかったりと大手企業でもなかなか対応しきれていない状況です。
そのような状況下で、組織の高生産性を実現するために、経営企画・人事企画を含めた業務プロセスの改善や現場の上司部下の関係性といったミニマムな課題まできちんと再設計するといった業務に課題感を感じていますね。
スキルバ:お話いただいた業務の中には、DX関連のタレントマネジメントシステムの導入なども含まれるのでしょうか?
権藤氏:もちろんです。生産性を高めるための1つの手段としてタレントマネジメントシステムの導入を検討するだけでなく、この部分はシステムに置き換えるが、この部分は別のシステムで補うといった検討を重ね、制度を刷新していく形ですね。
そこから、どのようなシステムが必要か要件を作成し、それを元に選定していくといった支援も行っています。
【大手コンサルファームと比較】権藤さんチームに依頼するメリット
スキルバ:大手人事系コンサルファームに依頼する場合と、権藤さん率いるキーメッセージさんに依頼する場合のメリットをお聞きしてもよろしいでしょうか?
権藤氏:人事に特化した大手コンサルファームに依頼する場合だと、デジタルやツールに関する知見が浅いため、時代遅れな業務フローを提案される可能性があります。
たとえば、ツールを使ってどの業務を自動化できるのかが感覚的に分からないため、想像の範囲内での提案になる可能性が高くなります。
そのため実現可能性の高い内容は、PMOとして課題管理をしてプロジェクトを推進したり、人事評価制度を作成したりする領域の提案にとどまってしまいます。
中には、デジタル×人事に強い大手コンサルファームも存在します。そのようなファームは報酬が高額です。加えて、独立などの人材流出によってプレイヤーが揃っていない可能性もあります。
もう少しリーズナブルなサービスを提供しているコンサル向け案件紹介サイトなどへの依頼が増加しているわけですね。
そのような企業は、大手コンサルファームから独立した優秀なコンサルタントを囲っているため、比較的低予算で質の高いサービスを提供している傾向があります。
そのような案件紹介サイトに依頼した結果、自分に連絡が来て、その時の状況次第で対応したり、しなかったりといった形になるわけです。
スキルバ:たしかにコストパフォーマンスが良いのは嬉しいメリットですね。
権藤氏:また、大手に比べてフットワークが軽いため、要望に沿った形で柔軟に対応できるのも私たちを選ぶメリットといえます。
得意な人に任せることで生産性をアップ
スキルバ:私の中でコンサルは、1件あたりの業務ボリュームがかさみやすいイメージなのですが、一般的にはどのくらいの案件を並行してやっていくものなのでしょうか?
権藤氏:フリーランスとして個人でやっているのであれば、4〜5件が平均的だと思います。
もちろん案件のボリュームにもよるので、1件張り付きでやっている人もいれば、型化したノウハウによって20件並行して、対応しているコンサルタントもいますね。
あとは、後ろに任せられる人がどれだけ控えているかによって、対応できる案件の数は変わってきますね。
スキルバ:なるほど。スキルバでも人材確保の方向性に迷うことがあるのですが、やはり1人に複数の案件を依頼するより、何人かで複数案件を回した方が生産性は上がりますよね。
権藤氏:そう思いますね。私はある種、工場のような分担制が理想的ではないかと考えています。
業務フローが得意だったり、リサーチが得意だったり、人によって得意なラインがあるので、その分野を集中的に任せることでROIも大きく変化します。
私が実際にやっている形だと、何社もの案件を並行して受ける中で共通項を見つけて、同じような業務は同じ人に任せるようにしています。それによって、担当者に効率よくノウハウがたまるので、生産性も上がりやすくなると感じています。
司馬遼太郎「坂の上の雲」から学ぶ方法論
画像出典:https://www.amazon.co.jp/
スキルバ:映画でも漫画でもゲームでもなんでも構わないので、権藤さんの人生観に大きな影響を与えたコンテンツを教えてください。
権藤氏:司馬遼太郎の「坂の上の雲」ですね。毎年、年末になるとNHKが放送していたのを欠かさず見てました。
「坂の上の雲」は、自分の先祖にルーツがある作品で、父方のひいじいちゃん、ひいひいじいちゃんは中将として、日清・日露戦争で作中のようなメンバーと一緒に戦ってた人なんですね。なので、結構自分のアイデンティティとして作品に惹かれる部分があります。
作中の日露戦争の前にロシアに留学して、仲良くなったけどその国と戦わなければならないみたいな展開をみていると「自分はとくに競合とかいないし、いたとしても同じ日本だしもっと仲良くできるな」みたいな感覚になるんですね。
また、作中のいろんな要素・エッセンスが学びになるのも、この作品の好きなポイントです。作中の戦争は武力の戦争ですが、今はビジネスの戦争が起こっていますよね。
現状、ビジネスで日本とアメリカには大きな差がついていることもあり、戦後の状況や国力からインサイトを入れるという意味ではすごく勉強になります。
戦わずして勝つという嘉納治五郎の教えだったり、方法論が詰まっているところも司馬遼太郎作品の好きな部分ですね。
スキルバ:おすすめありがとうございます。チェックしてみますね。
権藤さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。大変勉強になりました。
権藤氏:こちらこそありがとうございました。